2006年12月02日 (おススメの本)
若者はなぜ3年で辞めるのか?

若者はなぜ3年で辞めるのか?』は、90年代以降の人事制度の変化を現場で経験し、『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』などの話題作を発表してきた城繁幸氏の著書。新書でははじめての登場です。


このところ大学を卒業したばかりの新卒社員で3年でやめてしまうケースが増えているといわれています。その原因を、昭和的価値観にささえられた「年功序列制度」にもとめているかなり説得力がある本になっています。


年功序列制が崩壊して久しいと言われていますが、実はいまでもその制度は根強く残っているというのが著者の主張です。大企業の30代以上の社員はもちろんのこと、政府、財界、メディア、さらには労働者の見方とされる労働組合まで、さまざまな勢力によって年功序列制度が支えられていることを実例を交えて論説しています。


90年代半ばの就職氷河期以降、就職活動ではキャリア意識をしっかり持つ者と、持たない者の間で「勝ち」「負け」がはっきり現れるようになりました。ところが、就職活動の間、学生の側にはキャリア意識をしっかり持つように言いながらも、そうした学生を入社後に満足させるだけの働き場所を提供できない企業内部の意識や制度にも問題があるとしています。


その他、社員並みの給与保障はしなくてもすむ「派遣社員」を積極導入している背景に、熟年社員の既得権益の保護を求める風潮があるなど、この年功序列制度の弊害があらゆる制度に根付いているとしています。そして、これが若者の閉塞感につながっていると説明しています。


個人的感想からいえば、著者が見てきたのはあくまで大企業の内部のものであって、中小企業ではもっと違った問題があるような気がするのですが、いずれにせよメディアが華々しく宣伝したあの成果主義は年功序列制度を維持する一つのトリックだったことが伺えます。


ただ、こうなると非常に悲観的になってしまいがちですが、城繁幸氏は一度しっかりと働く理由を考えてみようと提案しています。給料は下がったものの、敷かれたレールから降りて、自分のキャリアを開き始めた若者の例などをあげながら、これからはキャリアは一本ではなく、複数の方向性を企業が示してあげるべきと提案しています。そこに、一抹の希望を見出すことができるのではないでしょうか。


自分の会社の人事制度のあり方にちょっと疑問に思ってる方、これから就職活動や転職活動をしようと考えている方、また成果主義を自社でも取り入れてみようと計画している人事担当の方などにおススメの一冊です。


4334033709若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
城 繁幸
光文社 2006-09-15

by G-Tools

<帯情報>
仕事がつまらない。先が見えない

若者が感じる閉塞感
その原因はどこにある?


「上司を食わせるためにクタクタになる若者たち」
いまの時代、汗水たらして働いても、若いときの苦労はけっして報われない。自分の人生のレールがどこに続いているのか?そして、そもそもなんのために働くのか?一度じっくり考えてみる必要があるだろう。

【関連情報】
『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の著者、城繁幸氏に直撃インタビュー(週刊東洋経済TKプラストップ)

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