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2006年12月26日

佐々木俊尚『ネットvs.リアルの衝突』が発売!

このところ、ちょっと固めの本ばかりの紹介ですが…
本屋で目にして気になった一冊を行き帰りの電車で読み終えました。

ITジャーナリストとして活躍する佐々木俊尚さんの新刊で『ネットvs.リアルの衝突』です。

2005年~2006年にかけてファイル交換ソフトWinnyが話題になりましたが、この本ではそのWinnyの開発の経緯や、Winny開発にまつわる背景が書かれています。悪の権化とされたWinnyですが、この本の中ではWinnyが本来持っていた可能性についても触れられています。

また、新しいテクノロジーを国家がどうやって排除し、また(逆に)利用しているか?その様子をWinny事件を手がかりに記述しています。

テクノロジーが持っている可能性や危険性について書かれていて、私たちが日ごろ接する新しいウェブサービスとのかかわり方を考えさせられます。ウェブの世界をちょっとまじめに考えてみたい人向けの一冊です。


ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するかネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか
佐々木 俊尚

文藝春秋 2006-12
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2006年12月17日

セブンアンドワイで2006年のベストセラー発表

セブンアンドワイが2006年のベストセラーを発表しました。

ヤフーとの連携で、このところ利用者が急上昇している人気のサイトですが、世代別のベストセラーなども発表しています。

これを見ると全世代を通じてハリーポッターが強かったんだなあ、ということが分かります。60代でも第2位に入っています。クライマックスに近づいてきたハリーポッターシリーズですが、次回作も注目です。

世代別のランキングを見ていて興味深かったのは、流行語大賞に輝いた『国家の品格』は10代~20代ではかなり下位に低迷していることです。かなり世代によって偏りがあることが分かります。

全体的にいえるのは、アマゾンやトーハンが発表したランキングと違って、オリジナル色がでていて面白い!


2006年ランキングTOP30
1位 ハリー・ポッターと謎のプリンス 上下
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2位 国家の品格
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3位 鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール
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4位 食品の裏側 みんな大好きな食品添加物
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5位 特別企画 のだめカンタービレ 1~15巻セット <シール付き>
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6位 病気にならない生き方 ミラクル・エンザイムが寿命を決める
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7位 子育てハッピーアドバイス
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8位 人は見た目が9割
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10位 押忍!番長×南国育ち 極附BOX
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11位 世界で一番おもしろい地図帳
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>>もっと見る
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2006年12月14日

三浦展『下流同盟』をさっそく読んでみました

『下流社会』という本で注目されるようになった三浦展氏の最新作『下流同盟--格差社会とファスト風土』を読んでみました。

日本の中の格差を論じる書籍が数多く発売されていますが、『下流同盟』もその流れを汲むものです。郊外への大型ショッピングセンターの進出が地域社会に与える影響を論じています。「ちょっとテーマが重そうだなあ」と思う方も多いかもしれないですけど、「なるほどそうなのか!」と感じさせてくれる1冊に仕上がっています。


大型ショッピングセンターが、日本の風景を画一化し、地域社会への帰属意識を薄めることになるということを、アメリカのウォルマートという巨大スーパーマーケット、群馬県の太田市、日本のフリーター事情などの事例を交えて紹介しています。


著者数人の共著になっていて、担当者が一章ずつ書いています。ですので、関心があるところから読んでいけば良いと思います。


ただ、犯罪や格差や地域経済の没落などの問題の原因を、グローバル化だけに求めることに議論展開の単純さを感じることもありますが、掲載されている事例が身近なので思わず引き込まれてしまいますよ。


下流同盟―格差社会とファスト風土下流同盟―格差社会とファスト風土
三浦 展

朝日新聞社 2006-12
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2006年12月06日

06年のベストセラーを発表!

2006年の書籍の年間ベストセラーを、書籍取次会社のトーハンが発表しました。
集計期間は05年12月~06年11月だそうで、堂々第1位に輝いたのは藤原正彦著「国家の品格」(新潮新書)。

あいかわらず新書の力強さを感じた1年です。

2位はJ・K・ローリング著「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(静山社)、3位はリリー・フランキー著「東京タワー」(扶桑社)。また、手本を鉛筆でなぞる“なぞり本”ブームの火付け役となった大迫閑歩書、伊藤洋監修「えんぴつで奥の細道」(ポプラ社)が4位に入ったとのことです。

さて、来年はどんな本が話題になるでしょうか?

<オンライン書店で購入しよう!>
『国家の品格』
『ハリー・ポッター謎のプリンス』
『東京タワー』
『えんぴつで奥の細道』

2006年12月02日

若者はなぜ3年で辞めるのか?

若者はなぜ3年で辞めるのか?』は、90年代以降の人事制度の変化を現場で経験し、『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』などの話題作を発表してきた城繁幸氏の著書。新書でははじめての登場です。


このところ大学を卒業したばかりの新卒社員で3年でやめてしまうケースが増えているといわれています。その原因を、昭和的価値観にささえられた「年功序列制度」にもとめているかなり説得力がある本になっています。


年功序列制が崩壊して久しいと言われていますが、実はいまでもその制度は根強く残っているというのが著者の主張です。大企業の30代以上の社員はもちろんのこと、政府、財界、メディア、さらには労働者の見方とされる労働組合まで、さまざまな勢力によって年功序列制度が支えられていることを実例を交えて論説しています。


90年代半ばの就職氷河期以降、就職活動ではキャリア意識をしっかり持つ者と、持たない者の間で「勝ち」「負け」がはっきり現れるようになりました。ところが、就職活動の間、学生の側にはキャリア意識をしっかり持つように言いながらも、そうした学生を入社後に満足させるだけの働き場所を提供できない企業内部の意識や制度にも問題があるとしています。


その他、社員並みの給与保障はしなくてもすむ「派遣社員」を積極導入している背景に、熟年社員の既得権益の保護を求める風潮があるなど、この年功序列制度の弊害があらゆる制度に根付いているとしています。そして、これが若者の閉塞感につながっていると説明しています。


個人的感想からいえば、著者が見てきたのはあくまで大企業の内部のものであって、中小企業ではもっと違った問題があるような気がするのですが、いずれにせよメディアが華々しく宣伝したあの成果主義は年功序列制度を維持する一つのトリックだったことが伺えます。


ただ、こうなると非常に悲観的になってしまいがちですが、城繁幸氏は一度しっかりと働く理由を考えてみようと提案しています。給料は下がったものの、敷かれたレールから降りて、自分のキャリアを開き始めた若者の例などをあげながら、これからはキャリアは一本ではなく、複数の方向性を企業が示してあげるべきと提案しています。そこに、一抹の希望を見出すことができるのではないでしょうか。


自分の会社の人事制度のあり方にちょっと疑問に思ってる方、これから就職活動や転職活動をしようと考えている方、また成果主義を自社でも取り入れてみようと計画している人事担当の方などにおススメの一冊です。


4334033709若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
城 繁幸
光文社 2006-09-15

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<帯情報>
仕事がつまらない。先が見えない

若者が感じる閉塞感
その原因はどこにある?


「上司を食わせるためにクタクタになる若者たち」
いまの時代、汗水たらして働いても、若いときの苦労はけっして報われない。自分の人生のレールがどこに続いているのか?そして、そもそもなんのために働くのか?一度じっくり考えてみる必要があるだろう。

【関連情報】
『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の著者、城繁幸氏に直撃インタビュー(週刊東洋経済TKプラストップ)